公正証書遺言を変更したい|2つの変更方法と必要性の判断ポイント
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- 公正証書遺言について
「再婚に伴い、公正証書遺言で指定した相続人を変えたい」
「公正証書遺言に書いた相続の分配方法を見直したい」
公正証書遺言は、原則として、遺言者本人が生きている間はいつでも何度でも作成し直すことができます。これを「遺言撤回自由の原則」と呼びます。
実際、家族関係を取り巻く諸状況や心境の変化により、公正証書遺言の内容を変更や撤回をしたいと考えることもあると思います。
本人の意思だけでなく、財産の内容が大きく変わったときも、書き直しを検討した方が良いと言えるでしょう。
ただし、新しく作成した遺言書に不備があったり、変更前の遺言書が残っていたりすると、死後に遺族を混乱させたり、不要な相続争いの火種となったりすることもあるため、公正証書遺言の内容変更は、正しく行う必要があります。
そこでこの記事では、公正証書遺言の変更について、方法や流れをわかりやすく解説していきます。
公正証書遺言の変更をしなくても良いケースについても説明するため、あなたが変更したいと思う内容が、本当に変更手続きの必要なものなのかについて判断することもできます。
本記事のポイント |
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□ 公正証書遺言の2つの変更方法を知る □ 変更箇所の数による変更の流れを知る □ 変更にかかる費用を知る □ 公正証書遺言の変更が必要なケースを知る |
この記事を読むことで、公正証書遺言の内容を正しく変更し、法的効力のあるスムーズな執行によって、遺族の相続争いを回避することができます。
1.公正証書遺言の内容を変更する方法
公正証書遺言の変更方法は、以下の2つです。
・新しい公正証書遺言を作成する
・異なる作成方式である「自筆証書遺言」の方式をもって遺言を作り直す
それぞれどのようにするのか、具体的に見ていきましょう。
1-1.公正証書遺言の内容を変更する方法①:新しい公正証書遺言を作成する
作成済みの公正証書遺言の内容を変更するため、新しい公正証書遺言を作成します。
変更箇所が複数であっても1箇所だけであっても、トラブルを回避するため、原則として新しい公正証書遺言を作成し直すのです。
また、変更箇所に応じて、以下の書類の中から再提出を求められる場合があります。
公正証書遺言書の作成に必要な書類 |
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身分や関係の確認ができるもの |
遺言者本人のもの |
印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの) |
戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの) |
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相続を受ける人のもの |
□ 本人と相続人との関係がわかる戸籍謄本(発行から3ヶ月以内のもの) |
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遺贈を受ける人のもの |
□ 遺贈を受ける個人の住民票(発行から3ヶ月以内のもの)、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの □ 遺贈を受ける法人の登記事項証明書または代表者事項証明書 |
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財産の特定ができるもの |
不動産を相続する場合 |
□ 登記事項証明書 □ 固定資産税評価証明書(または納税通知書中の課税明細書) |
預貯金や有価証券を相続する場合 |
□ 銀行名や証券会社の口座番号がわかるもの |
このほか、改めて作成当日に立ち会う証人2名も必要になります。この時の証人2名は、作成した当初の証人2名とは異なる人であっても問題はございません。
新しく作成する公正証書遺言には、変更にかかる以下の内容が記されます。
・前回の遺言内容の撤回を希望する旨
・前回作成した公正証書遺言の作成年月日及び事件番号(令和●年第●●●号という表記です)
・新たな公正証書遺言の作成年月日
これにより、公証役場で保管する公正証書遺言の原本が差し変わり、新たな公正証書遺言が有効になります。
【手元にある公正証書遺言を破棄しただけでは撤回できない】
公正証書遺言は、署名押印した原本が公証役場で管理されています。
そのため、作成後に遺言者に手渡された、公正証書遺言の正本や謄本を破棄したり、そこに変更や撤回の意思を書き加えたりしても、原本になんら影響を与えません。
公正証書遺言を撤回したり、内容を変更したりするには、必ず公証役場で公証人の手によって変更(又はそのものを撤回)してもらわなければいけないのです。
1-2.公正証書遺言の内容を変更する方法②:異なる作成方式である「自筆証書遺言」の方式をもって遺言を作り直す
遺言書の異なる作成形式である「自筆証書遺言」を作ることで、公正証書遺言の内容を撤回し、遺言を作り直すことができます。
公正証書遺言と自筆証書遺言と、遺言の種類によって法的な有効性が変わったり、方式によって優先順位が生じたりすることはありません。つまり、有効な遺言書であれば、その方式の違いは問われず、原則として「作成日付の新しい方が優先」となります。
なお、自筆証書遺言には以下のようなメリットとデメリットがあります。
公正証書遺言を自筆証書遺言で変更するメリットとデメリット |
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メリット |
デメリット |
・自分でいつでもどこでも作成ができる ・(厳格な方法はあるものの)加筆修正ができる ・費用(公証人手数料)がかからない ・遺言書の存在を秘密にできる ・遺言書保管所を利用することもできる |
・手元で保管する場合には、紛失や改ざん、隠蔽のリスクがある ・公証人が関与しないため、記載内容の不備や作成時の認知症等の有無などで無効主張をされることがある ・本人の手書き(自署)ができないと作成できず、負担が大きい ・【死後】開封前に裁判所による検認手続きが必要となる(遺言書保管所を利用した場合を除く) ・【死後】発見されないことがある(遺言書保管所を利用して通知を依頼した場合を除く) |
自筆証書遺言の場合でも、以下について明記しておくことで、公正証書遺言そのものを撤回することができます。
・公正証書遺言の撤回を希望する旨
・作成済みの公正証書遺言の年月日及び事件番号(令和●年第●●●号という表記です)
・自筆証書遺言の要件を充足させる(作成年月日、原則全文を自署+署名押印)
ただし、自筆証書遺言は作成が手軽な分、記述の誤りや法的知識の不備・誤解によって、効力を十分に発揮できないことがあります。万が一、自筆証書遺言の不備等で無効になれば、「変更が無効」になり、変更前の公正証書遺言と内容が相違する部分において、相続人間で係争に発展する可能性が高くなります。
自筆証書遺言によって公正証書遺言の内容を変更したい場合は、できるだけ自己の判断のみで変更しようとするのではなく、行政書士など専門家に変更内容についての事前相談をすることをおすすめします。
また、公正証書遺言を自筆証書遺言で変更した場合、保管場所によっても注意が必要になるため、以下の点に注意してください。
1-2-1.自筆証書遺言を自宅で保管する場合の注意点
公正証書遺言の内容を変更する旨を記した自筆証書遺言を、自宅で保管する場合は、何より紛失や改ざん、隠蔽のリスクを伴います。
特に高齢になるほど一般的に記憶力は低下するため、紛失のリスクが高まったり、気軽に書けるから…と、複数の自筆証書遺言が出てきて混乱を招いたりするケースが多くあります。
自筆証書遺言を自宅で管理する場合は、必ず日付を明記することはもちろん、改ざんが行われないように少なくとも封をしておくようにしてください。
また、信頼できる人物に、自筆証書遺言の保管場所を伝えておくことも重要です。
自宅保管の自筆証書遺言は、遺言者の死後に発見された後、開封せずにそのまま家庭裁判所での検認手続きをする必要があるため、申し立てのための相続証明情報を不足なく揃える必要があるなど、相続人の手間が増え、相続手続きの開始に1~2ヶ月かかることも覚えておいてください。
1-2-2.自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)で保管する場合の注意点
公正証書遺言の内容を変更する旨を記した自筆証書遺言を、遺言書保管所(法務局)に預ける場合は、特に内容の不備がある可能性に注意してください。
法務局に保管を依頼する自筆証書遺言は、形式について細かく決められ、所定の形式に則っていないと差し戻されることもありますが、あくまで形式面のチェックのみであって、遺言書の内容そのものについての確認は一切してもらえません。
そのため、せっかく作成した自筆証書遺言でも、内容面の不備で無効になってしまう可能性が残ります。
自筆証書遺言でありがちな間違いを以下にまとめましたので、参考にしてください。
自筆証書遺言でよくある間違い |
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間違いの例 |
注意点 |
□ 「託す」「任せる」という言葉で書き記す |
「管理させる」だけの意味合いに読み取れて、相続できないことがある。「~に遺贈する」か「~に相続させる」が一般的な文言。 |
□ 預貯金の預金種別(普通・当座)や口座番号の指定がない |
これらの指定がないことで、金融機関側の判断で相続手続きができない場合もある |
□ 相続や遺贈をする自宅不動産を「住所」で記す |
不動産登記事項証明書に記載された正確な地番や家屋番号でない場合は、法務局の登記官の判断で相続登記できないことがある |
□ 指示語(これ、それ、あれ、どれ)が多い |
どの財産や相続人について指定しているのかが曖昧になり、解釈が分かれ、円滑に相続できないことがある |
自筆証書遺言はいつでも気軽に自筆できるものではありますが、法的効力を得るためには、形式や表現、訂正方法など、非常に細かく気を配る必要があります。
公正証書遺言の変更や撤回を自筆証書遺言で行いたい場合は、自分だけで解決しようとするのではなく、遺言制度に詳しい行政書士や弁護士などの専門家に相談をし、確認をしながら進めるのが良いでしょう。
2.公正証書遺言の変更箇所の数によって変更の文言が異なる
1-1.公正証書遺言の内容を変更する方法①:新しい公正証書遺言を作成するでお伝えした通り、新たな公正証書遺言を作成するにあたっては、証人2名と関係書類の提出が改めて必要になります。
基本的には、最初の公正証書遺言を作成し、原本を保管している公証役場で行います。
公正証書遺言の変更をしたい箇所の数によって、変更の文言が変わります。
具体的には「変更箇所が1箇所だけか、複数あるか」です。
実際には、「どこをどう変えたいか」や変更の目的などを公証人に相談の上、どんな方法で変更するかが決まります。
それぞれどのような変更文言が添えられるのか、具体的に見ていきましょう。
2-1.変更箇所が1箇所だけの場合
変更箇所がごく限定的で、遺言のほかの箇所に影響したり矛盾が生じたりしない場合には、公正証書遺言に以下のような訂正の文言を入れて、新たな公正証書遺言を作成します。
公正証書遺言の部分訂正文言
令和×年×月×日法務局所属公証人◯◯◯◯作成同年第××××××号遺言公正証書の財産△△△△を●●●●に相続させる部分を撤回し、同財産を◆◆◆◆(平成×年×月×日生)に相続させると改める。その余の部分は、すべて上記遺言公正証書記載の通りである
公正証書遺言を作成し直すだけでなく、上記のように一文で変更点を明記することで、変更があった事実や経緯を残しておくのです。
2-2.変更箇所が複数箇所ある場合
以下の場合には、前回の公正証書遺言をすべて撤回する旨を書き添えた上で、公正証書遺言全文を書き直します。
・変更箇所が複数ある
・変更が複数回目である
・変更は1箇所だが遺言のほかの箇所に影響や矛盾が生じる
この場合は、新たに作成する公正証書遺言に、以下の文言を添えます。
公正証書遺言の全部撤回文言
令和×年×月×日法務局所属公証人◯◯◯◯作成同年第××××××号遺言公正証書による遺言を全部撤回する
以前に作成した公正証書遺言の原本は、変更や撤回の経緯を示す事実書類として、原本としての効力は失いますが、公証役場に保管されます。
3.変更にかかる費用
公正証書遺言の内容を変更する場合、変更方法によってかかる費用が異なってきます。
・新しい公正証書遺言を作成する場合
・異なる形式である「自筆証書遺言」の方式をもって遺言を作り直す場合
それぞれいくらくらいかかるものなのか、費用(公証人手数料)の目安を見ていきましょう。
3-1.新しい公正証書遺言を作成する場合の費用
公正証書遺言で内容変更をする場合の費用は、基本的に以下の費用がかかります。
・変更した箇所にかかる手数料
・前回作成した公正証書遺言の撤回料
手数料の算出は、最初の作成時に支払った際と同様に、相続人ごとの相続額によって、以下の一覧で決められています。
【 公正証書遺言の作成手数料 】 |
|
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相続させたい額 |
手数料 |
100万円以下 |
5,000円 |
100万円を超え200万円以下 |
7,000円 |
200万円を超え500万円以下 |
11,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 |
17,000円 |
1,000万円を超え3,00万円以下 |
23,000円 |
3,000万円を超え5,000万円以下 |
29,000円 |
5,000万円を超え1億円以下 |
43,000円 |
1億円を超え3億円以下 |
43,000円に超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円を超え10億円以下 |
95,000円に超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円を超える場合 |
249,000円に超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
筆者にて実際に公証役場へ問合せして確認したことがありますが、変更のない箇所についての手数料は、基本的に発生しません。つまり、作成時に一度「公証人手数料」を支払った部分についての二重払いはないということです。
この手数料に、前回作成した公正証書遺言を撤回するための手数料として1万1,000円が加算されるのです。
また、「証人2名」を依頼する場合には、その報酬(日当交通費等)が発生します。この費用については、初回の作成時と概ね同じ金額が改めて発生することとなります。
公正証書遺言の内容変更にかかる費用は、遺言者の財産や変更内容によって大きく変わるため、別記事「公正証書遺言の作成にかかる費用(公証人手数料等)は約6~50万円!」を参考に目安を立ててください。
3-2.自筆証書遺言で遺言を作り直す場合の費用
自筆証書遺言を新たに作成する場合の費用は、以下の通りです。紙代やインク代はかからないものとします。なお、専門家に相談する場合は、その専門家に対する相談料が別途生じる可能性はあります。
【 自筆証書遺言で公正証書遺言の内容を変更する費用 】 |
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自宅保管の場合 |
無料 |
法務局保管の場合 |
3,900円 |
公正証書遺言での変更と比べると明らかに安く済みますが、自筆証書遺言の作成には注意すべきことがたくさんあるため、1-2.公正証書遺言の内容を変更する方法②:異なる作成方式である「自筆証書遺言」の方式をもって遺言を作り直すの項で紹介した注意点をいま一度よく読んでご検討ください。
4.【ケース別】公正証書遺言の内容変更をした方がいい?しなくていい?
公正証書遺言は、熟練した法律家である「公証人」の関与によって記されるため、多少の変更点があっても問題が生じないよう、予備的に有効な法的に効力のある文言が工夫して添えられているものです。
例えば、遺贈相手(受遺者)が遺言者と近い年齢である場合に、「遺言者と同時又は先に同人が死亡した場合には、当該財産は●●に遺贈(法定相続人であるときは相続に読み替える)させるものとする」といった表記です。
そのため、基本的には細かい内容変更を都度行う必要はありません。
ただし、すべての遺言に言えることですが、「遺言は遺言者の意思」なので、「遺言者の意思」が変わった場合には、できるだけ早く変更をするべきと言えます。
どんな内容変更の場合に、公正証書遺言の変更をするべきなのか、ケースごとに詳しく見ていきましょう。
4-1.公正証書遺言の変更をするべきケース
以下の場合は、「遺言者の意思」や「意図した結果」が変わっているため、公正証書遺言の内容変更をしましょう。
■ 相続人(又は受遺者)を変えたい
婚姻関係の変化があった場合や、高齢になった自分の世話をしてくれた人に報いたい場合など、相続人を変えたり、増やす/減らすなどしたいケースでは、できるだけ早く公正証書遺言の内容を変更した方が良いでしょう。
また死亡の順番が予期せず変わってしまい、その対策をしていなかった場合も変更しておくようにしましょう。
■ 相続させる財産の内容を変えたい
相続させる財産の項目について、入れ替えや取り消しなどを行う場合も、できるだけ早く公正証書遺言の内容を変更しましょう。
例えば、「A銀行を長男に、B銀行を長女に」としていた場合において、「B銀行を長男に、A銀子を長女に」とするようなケースです。中身を動かす方法もありますが、「実質的な遺言の撤回」と誤認されないように、中身だけの資金移動はあまりお勧めできません。
■ 財産に大きな増減があった
遺言者の財産のうち、特定の不動産の価額や金融口座の額面に大きな増減があった場合は、相続人の遺留分(=法で決められた相続人ごとの相続割合)に影響する場合があります。
上図のように、公正証書遺言の作成時点では、すべての相続人に対して遺留分通りの配分ができていたものが、財産の増減により、バランスが崩れてしまうことがあります。
その場合、相続に関するトラブルを避けるため、新たに分配方法を変えたり、公正証書遺言に記載していない別の口座を作って財産を移しておき、公正証書遺言で「記載のない一切の財産」の相続に指定した相続人に行くようにするなど、何かしらの対応をしておいた方が良いでしょう(これは少し特殊な対応策かもしれませんが、やはり実質的な部分撤回との誤認をされないように、遺言作成後の大きな資金移動については注意が必要です)。
なお、どんな種類の遺言書であっても、遺言内容の変更が度重なると、後から事実関係などを追う作業が大変になったり、死後に遺族間でトラブルを招いたりする危険性があるため、影響や関係性のほか、遺留分(=法で決められた相続人ごとの相続割合)についても十分に考慮して内容変更を行ってください。
4-2.公正証書遺言の変更をしなくてもいいケース
以下の場合は、軽微な変更となり、遺言書全体の有効性にも影響がないと考えられる場合であれば、公正証書遺言の内容変更までしなくても問題ありません。とはいえ、少しでも心配があれば、公証役場に相談してみても良いでしょう。
■ 相続人が遺言者よりも先に死亡してしまったが、予備的な記載が設けてある場合
公正証書遺言に記載した相続人または遺贈人が死亡してしまった場合、基本的にはその相続人にかかる遺言はなくなり、残りの相続人に財産が按分されます。
そのため、亡くなった相続人の子どもが自動的に相続することは起こらないため、注意が必要です。
もしも、あらかじめ相続人の万一を考えて、その子どもに相続させたい場合は、公正証書遺言の作成時点で「予備的相続」として、以下のような文言を添えます。
「◯◯◯は長男に相続させる。ただし死亡時に長男が亡くなっていた場合、長男の子である孫に相続させる」
このような記載がある場合は、但し書き部分が適用されるので、特に書き換える必要はありません。
■ 指定していた遺言執行者が死亡してしまった
遺言執行者が遺言者よりも先に死亡してしまった場合、残された遺族間の話し合いで穏便に解決できる場合には、遺言執行者がいなくても遺言書が無効になるわけではなく、事後的に選任することも可能であることから、基本的に公正証書遺言の内容変更をする必要はありません。
相続人間で協力して手続きを行うのが困難で合ったり、遺言書の内容的に、必ず遺言執行者が手続きを行うものがある場合では、遺言者の死後、相続人が家庭裁判所に対して、新たな遺言執行者の選任を請求することになります。(民法第1010条)
なお、残された家族が高齢や病気で家庭裁判所での手続きが難しいて思われる場合には、あらかじめ公正証書遺言の中で遺言執行者を複数指定したり、予備的な遺言執行者を指定しておいたりすることで、「遺言執行者の不在」という事態が起こらなくなります。
上記以外にも、例えば、
・遺言者や受遺者の居住地(住所)が変わった場合
・遺言者や受遺者の氏名が変わった場合
・遺言執行者に指定した法人の本店所在地や社名が変更になった場合
・作成に携わった公証人や証人が、遺言者よりも先に亡くなった場合
など
これらは、遺言作成後の変更について、公的書類で追跡や立証が可能ですし、公証人や証人の存命は有効性とは関係なく、これらの事実発生については公正証書遺言の効力には影響がございません。
もし気になるようであれば変更しても良いですが、特に変更の必要性は生じませんので、安心して頂いて大丈夫です。
まとめ
今回は、公正証書遺言の変更方法について詳しくお伝えしました。
一度作成した公正証書遺言の内容を変更する方法は、以下の2つがあります。
【 公正証書遺言の内容を変更する方法 】
・新しい公正証書遺言を作成する
・異なる作成方式である「自筆証書遺言」の方式で遺言を作り直す
公正証書遺言の内容変更にかかる費用は、変更方法によって以下のように異なります。
【 公正証書遺言の内容変更にかかる費用 】 |
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新しい公正証書遺言を作成する場合 |
自筆証書遺言で遺言を作り直す場合 |
・変更した箇所にかかる公証人手数料 ・前回作成した公正証書遺言の撤回に係る手数料 ・(必要であれば)証人の手数料(日当交通費等) |
・自宅保管の場合:無料 ・遺言書保管所(法務局)保管の場合:3,900円 |
公正証書遺言の内容変更をするべきケースは、主に以下の3つです。
【 公正証書遺言の内容を変更するべきケース 】
・相続人(又は受遺者)を変えたい
※また死亡の順番が予期せず変わってしまい、その対策をしていなかった場合を含む
・相続させる財産の内容を変えたい
・財産に大きな増減があった場合
本記事を読んで、公正証書遺言の内容を変更するべきかどうか、あなたのケースに踏まえた判断ができれば幸いです。
公正証書遺言の変更について相談したいときは、ぜひ遺言シェルパ名古屋を運営する「行政書士法人エベレスト」へお気軽にご相談下さいませ。