公正証書遺言を作成するなら必ず知っておくべきメリット7つとは?
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「公正証書遺言を作ってみたいけれど、他の遺言形式と比べてどんなメリットがあるんだろう?」
「公正証書遺言って手続きが難しそう…..。その分メリットが大きいのだろうか?デメリットもあるの?」
あなたは今、こんな風に悩まれていませんか?
結論から申し上げると、公正証書遺言には以下のような7つのメリットがあります。
【公正証書遺言の7つのメリット】
①作成時の公証人の関与により無効になりにくい(公的な証明力が高い)
②公証役場で安全に保管されるため、偽造・変造リスクが極めて低い
③全文を遺言者が自社する必要がない(自筆の負担が少ない)
④公証人の出張も可能であり、原則として場所の制限なく作成が可能
⑤検認手続きを行うことなく、遺言執行(相続手続き)が可能
⑥「遺言検索システム」により、遺言者亡き後でも遺言書の検索が可能
⑦「原本・正本・謄本」と分けて管理が可能(※自筆の場合は原本1通のみ)
上記をご覧いただくとお分かりのように、より安全に、より正確に遺言を保管したい場合は、自筆証書遺言の形式ではなく、「公正証書遺言」がもっとも適していると言えるでしょう(但し、死亡後の通知制度のように自筆証書遺言保管制度にしかない制度もあるため、比較検討することは推奨しています)。
さらに、遺言者が健康不安を抱えていて公証役場まで外出が困難であっても、公証人が自宅や病院、施設などへ出張してきてくれます(※但し、公証人手数料は加算となりますので、ご留意ください。)ので、公正証書遺言を作成可能です。
その一方で、公正証書遺言の作成には費用(公証人手数料)がかかったり、遺言作成までのステップに手間がかかったりと、いくつかデメリットがあるのも事実です。
その意味では、公正証書遺言が果たしてご自分にとってもっとも理想的な遺言書であるかどうかを、きっちり見極める必要があるでしょう。
そこで今回の記事では、公正証書遺言の7つのメリットをご紹介した上で、同時にデメリットについても触れていきます。
またどのような方が、公正証書遺言を選んだ方がいいのか、依頼者(遺言者)の事例についても詳しく解説していきますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
今回の記事でわかること |
---|
・公正証書遺言のメリットとデメリット ・公正証書遺言はこんな方にお勧め ・公正証書遺言を作成するためのステップ |
この記事をお読みいただければ、公正証書遺言の具体的なメリット&デメリットを知ることができ、ご自身にとって公正証書遺言を選ぶべきかどうかの判断が可能になるでしょう。
加えて、公正証書遺言の作成ステップもご紹介しますので、どれぐらい手間のかかるものなのかをイメージしてみて、ぜひメリットと一緒に天秤に乗せて検討してみて下さいね。
1.公正証書遺言のメリット7つ
なんとなく「安全」「安心」のイメージが強い公正証書遺言ですが、以下7つのメリットがあります。
【公正証書遺言の7つのメリット】
①作成時の公証人の関与により無効になりにくい(公的な証明力が高い)
②公証役場で安全に保管されるため、偽造・変造リスクが極めて低い
③全文を遺言者が自署する必要がない(自筆の負担がない)
④公証人の出張も可能であり、原則として場所の制限なく作成が可能
⑤検認手続きを行うことなく、遺言執行(相続手続き)が可能
⑥「遺言検索システム」により、公正証書遺言の検索が制度上可能
⑦「原本・正本・謄本」と分けて管理が可能(※自筆の場合は原本1通のみ)
さっそく具体的にご紹介してきましょう。
1-1. 作成時の公証人の関与により無効になりにくい(公的な証明力が高い)
最大のメリットは、公証人に遺言内容を口頭で伝えながら遺言作成をするので、方式の不備で遺言内容が無効になるというリスクがほとんどない点です。
公証人は法律のプロなので、複雑な遺言内容であっても、内容をきちんと整理した上で法にかなった内容へとまとめてくれます。そのため、遺言内容にミスや不備が出ることが少なく、安心して遺言書を残すことができます。
なお、公証人は、遺言書作成当日において、遺言者に遺言内容の質問(聴取)や氏名住所生年月日を聴取したりしますが、遺言者の判断能力のついて簡易なテストなどを実施することはございません。
そのため、形式的な不備はないものの、遺言者が遺言書作成当時に認知症が進んでいたことなどを理由として、公正証書遺言自体が無効になった裁判例はあるようですので、その点は留意が必要です(公証人は医者ではないため、医学的な判断が出来るわけではないので、こういった事例が生じます)。
1-2. 公証役場で安全に保管されるため、偽造・変造リスクが極めて低い
遺言者の作成した公正証書遺言は、公証役場で安全に原本が保管されます。
公証人に口頭で遺言内容を告げながら、書面に作り上げていく公正証書遺言は
・原本
・謄本
・正本
の3種類に分かれて、遺言書作成が完了した当日に、各1部ずつ交付されます。
そのうち、「(公正証書遺言の)原本」を公証役場で保管してくれ、「謄本」・「正本」は依頼者の手元で保管します(依頼者によっては、相続させたい相続人や指定した遺言執行者などに渡すこともあります)。
万が一、依頼者が謄本や正本を紛失してしまっても、公証役場に行けば「原本」が残っていますし、容易に立ち入れない場所で厳重に保管されているため、紛失や改ざん(偽造や変造)のリスクも非常に低いのです。
1-3. 全文を遺言者が自署する必要がない(自筆の負担がない)
公正証書遺言には、全文はもちろんのこと、遺言者が字が書けない場合であっても、遺言者の自署が必要ありません。
公正証書遺言では、仮に遺言者が体調不良や衰弱などで自署ができなくても、依頼人の不調が理由で自署できなかった旨を記し、公証人の職印を押せば、遺言者の自署の代わりとすることができます。
例えばこれが自筆証書遺言だった場合、添付する財産目録を除いて、全ての文章(※全文)を自署する必要が出てきます。
法改正により、添付する財産目録など一部については自筆の必要性が緩和されましたが、基本的に自署が前提の形式であるため、ご高齢の方々にとっては、大変な負担になります。
遺言者が元気なうちはそれでも間に合うかもしれませんが、万が一自署できないほどの不調を抱えていた場合、自筆証書遺言は作成が不可能になるのです。
こうした観点から見ても、公正証書遺言は公証人に重要な自署さえも代行してもらえるため、健康不安を抱えている依頼者にとっては、メリットの大きいものだと言えるでしょう。
筆者自身(行政書士法人エベレスト)の経験でも、家族に伝えたい「付言事項」についてパソコンですらすらと文章を残し、かつ訂正が容易にできたことはとても助かりました。自筆証書遺言の形式で作成するには長い文章は不向きではないでしょうか。
1-4. 公証人の出張も可能であり、原則として場所の制限なく作成が可能
公証人は公証役場以外の場所へ出張することで、公証役場以外の場所においても公正証書遺言を作成することができます。
「1-3. 全文を遺言者が自署する必要がない(自筆の負担がない)」でもお伝えしたように、例えば依頼人が体調不良で歩行困難を抱えていたり、入院して公証役場まで行けない場合でも、公証人が依頼人の希望する場所へ出張してきてくれますので、公正証書遺言の作成は可能です。
但し、出張を依頼した場合は、公証役場へ支払う公正証書遺言の作成手数料(公証人手数料)が原則として通常の1.5倍かかります。また、公証人の交通費も依頼人が負担することになりますので、出張を依頼する差には、念頭に置いておきましょう。
1-5. 検認手続きを行うことなく、遺言執行(相続手続き)が可能
公正証書遺言は、家庭裁判所の検認手続きが不要なため、遺言者の死後、公正証書遺言に沿って速やかに相続手続きを進めることができます。
検認手続きについて、家庭際裁判所では以下のように説明しています。
「検認」とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして,遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
引用:裁判所
つまり「検認」とは、遺言の存在や内容を相続人に知らせるものであり、遺言書の偽造や変造を防ぐために、遺言書の形状や日付、文の加筆・削除・訂正の状態、署名などの内容を明確にすることを指します。
いざ「検認」手続きを申し立てるとなると、遺言書を保管していた人や発見した人が、必要書類を不足なく収集したうえで申立書と一緒に家庭裁判所へ提出し、まその後は家庭裁判所からの「検認を行う日(検認期日)」についてのお知らせ(送達)を待たなければなりません。
検認期日の指定は、家庭裁判所の込み具合によって、1か月以上先の日にちが指定されることも珍しくありません。
そして検認期日の当日、家庭裁判所において、検認する場に立ち合い(※申立人以外の出席判断は各相続人に任されていますので、制度上は1名のみ参加すれば検認手続きは問題なく進みます。)、家庭裁判所が遺言書を開封(※封印がある場合)し、「検認」するのを確認します。
その後、家庭裁判所の方が、自筆証書遺言に「検認済証明書」を付けてくれます。この「検認済証書」が付いて初めて、自筆証書遺言書の執行が可能となります。
なお、自筆証書遺言による形式であっても、遺言書保管制度を利用していた場合は、この検認手続きは不要となります。
このように考えると、検認手続きは遺言執行まで1か月以上もの時間がかかるため、その間は相続手続きが開始できずにひたすら検認手続きの完了を待つことになります。
しかし公正証書遺言であれば、家庭裁判所の「検認」が不要なため、それだけ迅速に相続作業をスタートすることができるのです。
1-6. 「遺言検索システム」により、公正証書遺言の検索が制度上可能
公証役場において、遺言検索システムで公正証書遺言を制度上検索できます。
遺言検索システムとは、公証人が作成した公正証書遺言の情報を日本公証人連合会がデータベース化し、相続人が公正証書遺言の存在を調べることができるよう整えたシステムです。
公正証書遺言であれば、遺言検索システムに情報が登録されているため、相続人や受遺者からの請求により、公正証書遺言の有無についての客観的な調査が可能であるため、大変便利です。
例えば遺言者が公正証書遺言の存在を相続人に知らせず、急逝してしまった場合でも、遺された相続人たちが遺言を調べることができるため、遺産によるトラブルも未然に防ぐことができるでしょう。
なお、自筆証書遺言においても、「遺言書保管制度」は出来ましたので、この制度を利用することで調査をすることが可能になりましたが、遺言書保管制度を利用することなく、遺言者の手元で保管していた場合については調査対象外であるため、やはり遺言書の有無について確定的な判断が出来るようになったわけではありませんので、注意が必要です。
1-7. 「原本・正本・謄本」と分けて管理が可能(※自筆の場合は原本1通のみ)
公正証書遺言は、原本・正本・謄本の3種類の交付があるため、複数人で分けて手元に保管することができます。
但し原本は、公証役場で保管することが決まっているため、手元に置いておくことはできません。
その代わり、正本と謄本を遺言者が保管することができるため、遺言執行者や相続させることとなる相続人にこれらを預けることも可能です。
2.【比較図】公正証書遺言と他の遺言形式とのメリットの違い
公正証書遺言の7つのメリットについてお伝えしましたが、他の遺言形式(自筆証書遺言・秘密証書遺言)と比べた場合、公正証書遺言のメリットは果たして大きいのでしょうか?
公正証書遺言・自筆証書遺言(本人保管の場合と法務局保管の場合)・秘密証書遺言のメリットの違いを表にまとめてみると、以下の通りになります。
それぞれの遺言書のメリット・デメリット |
||
---|---|---|
種類 |
メリット |
デメリット |
公正証書遺言書 |
①作成時の公証人の関与により無効になりにくい(公的な証明力が高い) ②公証役場で安全に保管されるため、偽造・変造リスクが極めて低い ③全文を遺言者が自署する必要がない(自筆の負担がない) ④公証人の出張も可能であり、原則として場所の制限なく作成が可能 ⑤検認手続きを行うことなく、遺言執行(相続手続き)が可能 ⑥「遺言検索システム」により、公正証書遺言の検索が制度上可能 ⑦「原本・正本・謄本」と分けて管理が可能(※自筆の場合は原本1通のみ) |
・費用(公証人手数料)がかかる ・原則として公証役場へ赴き、事前の打ち合わせを行う必要がある ・証人を2名用意しなければならない |
自筆証書遺言書 (本人保管) |
・費用がかからない ・証人を用意する必要はない ・遺言内容を他人に見られることはない(作成の事実を秘匿できる) |
・原則自分で管理するので紛失・破棄・改ざんのリスクがある ・自筆で全文を筆記しなければならない ・執行時に検認手続きが必要 ・遺言の存在に気付かれないリスクがある ・法令上の要件を満たさなかったり、内容に不備があったりすると無効になり得る |
自筆証書遺言書 (法務局保管) |
・遺言書保管所(法務局)で管理するので安全 ・希望すれば、遺言者の死亡時は指定した方に遺言の通知が届く ・証人を用意する必要はない ・執行時に検認手続きが不要 |
・少額ではあるものの、保管申請時に遺言書保管料がかかる ・自筆で全文を自署しなければならないことに変わりはない ・法令上の要件を満たさなかったり、内容に不備があったりすると無効になり得る |
秘密証書遺言書 |
・パソコン、遺言者の自筆、代筆などで遺言書作成が可能(但し、署名は遺言者の自署が必須) ・公証役場で遺言書の存在を証明してもらう ・遺言内容を他人に見られることはない(但し、作成事実自体は公証人と証人2名に知られることになる) ・遺言検索システムで検索できる |
・証人2名を用意しなければならない ・執行時に検認手続きが必要 ・公証役場で原本が保管されず、持ち帰って自分で管理するので紛失・破棄・改ざんのリスクがある ・公証人手数料がかかる ・法令上の要件を満たさなかったり、内容に不備があったりすると無効になり得る |
引用:自筆証書遺言書保管制度の利用をお考えの方へ
参考:法務省
上記をご覧言いただくとわかるように、公正証書遺言は法的に不備になることがほとんどなく、安全に保管され、遺言者の死後も遺言検索システムで遺言状を検索できるなど、メリットが大きいことがわかりますね。
大きな安心と引き換えに、公正証書遺言の作成には公証人手数料がどうしても発生しますが、それでも遺言書を少しでもリスクなく保管し、遺言者の死後もスムーズな相続手続きをしたいと希望されるのであれば、公正証書遺言を選択すべきだということが一目瞭然でしょう。
ただ、「自筆証書遺言(本人保管)」および「自筆証書遺言(法務局保管)」とのメリットの違いがよくわからないという方もいらっしゃることでしょう。
そこでこの章では、各遺言形式のメリットについて、改めて触れていくことにします。それぞれのメリットを知った上で、両者を上回る「公正証書遺言」の「安全」「安心」について、改めて整理しておく機会にしてみて下さい。
2-1.自筆証書遺言とのメリットの違い
自筆証書遺言は、(原則として)全文を自筆(自署)で筆記して、遺言書を作成する形式です。
但し、「自分で保管する場合」と「遺言書保管所(法務局)に保管してもらう場合」の2通りを選ぶことができます(※法改正によって近年可能になりました)。
それぞれのメリットを見ていきましょう。
2-1-1.自筆証書遺言を自分で保管する場合のメリット
自筆証書遺言(自分で保管する場合)のメリットは、以下の通りです。
・費用がかからない
・証人を用意する必要はない
・遺言内容を他人に見られることはない(作成の事実を秘匿できる)
1つずつ説明していきましょう。
費用がかからない
自筆証書遺言のうち、自宅で保管する場合は、遺言者本人が自筆で自筆証書遺言を作成し、自宅で管理するため、作成費用や保管費用がかかりません。
作成も管理もすべて自力で行う分、手間はかかりますが、費用が一切かからないのが最大のメリットでしょう。
なお、銀行の「貸金庫」で保管される方がいらっしゃいますが、貸金庫を相続人たちが開披する手続きに時間を要してしまうため、筆者の個人的にはあまりお勧めの保管方法ではございません。
証人を用意する必要はない
自筆証書遺言の作成には、証人を1人も用意する必要がありません。
あくまでも、自分で作成して自分で管理・保管するものなので証人は不要であり、ご自分のペースで遺言準備を整えることができます。
遺言内容を他人に見られることはない(作成の事実を秘匿できる)
自筆証書遺言は自力で作成するため、第三者に遺言内容を知られるリスクはありません。
遺言内容が外に漏れるのを完全に防ぎたいと考えている場合は、自筆証書遺言を選択肢に入れるのもいいかもしれません。ただ、自分で保管する場合には、その保管方法については注意が必要です。
2-1-2.自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)に保管してもらう場合のメリット
次に、自筆証書遺言(遺言書保管所たる法務局に保管してもらう場合)のメリットを見てみましょう。メリットは、以下の4つです。
・遺言書保管所(法務局)で管理するので安全
・希望すれば、遺言者の死亡時は指定した方に遺言の通知が届く
・証人を用意する必要はない
・執行時に検認手続きが不要
それでは、詳しく説明していきましょう。
遺言書保管所(法務局)管理するので安全
自筆証書遺言のうち、「自筆証書遺言保管制度」を利用した場合、自筆証書遺言を遺言書保管所(法務局)で保管してもらうことが可能です。
遺言書保管所(法務局)で厳重に保管してもらうことで、自筆証書遺言を紛失したり、破棄、内容の改ざんをされたりといったリスクを避けることができます。
希望すれば、遺言者の死亡時は指定した方に遺言の通知が届く
「自筆証書遺言保管制度」を利用すると、遺言者の死亡時、あらかじめ指定しておいた方に自筆証書遺言のことを知らせる通知を届くようにすることが可能です。
自筆証書遺言の存在を確実に指定人に知らせることができるため、遺言者に急なトラブルがあって自筆証書遺言の存在のことを周りに伝えられなくても、予め指定した人に遺言内容を伝えることが可能です。
この制度は、現行の公正証書遺言制度にもない制度ですので、大きなメリットの1つであると言えます。
証人を用意する必要はない
自筆証書遺言を法務局に保管してもらう際は、証人を1人も用意する必要がありませんので、遺言者の負担も軽くなります。
「自筆証書遺言保管制度」は、自筆で作成した遺言書を法務局へ持参し預けます(窓口で形式的な審査が有ります)。
その際は、法務局職員と依頼人(遺言者)とのやりとりになるので、証人を改めて用意することはなく、その分かかる手間も証人への日当交通費等や謝礼も省けます。
執行時に検認手続きが不要
家庭裁判所による検認手続きが不要となるので、遺言者が亡くなったあとは、速やかにに相続手続き(遺言執行)を開始できます。
「自筆証書遺言保管制度」は、一度法務局で遺言を預かる制度なので、遺言書の存在や内容を相続人に知らせるための検認作業が必要ありません。その分行程がひとつ減り、後に遺された相続人にとっても負担が少なくなります。
2-2.秘密証書遺言とのメリットの違い
次に、秘密証書遺言とのメリットの違いを見てみましょう。
秘密証書遺言のメリットは、下記の通りです。
・パソコン、遺言者の自筆、代筆などで遺言書作成が可能(但し、署名は遺言者の自署が必須)
・公証役場で遺言書の存在を証明してもらう
・遺言内容を他人に見られることはない(但し、作成事実自体は公証人と証人2名に知られることになる)
・遺言検索システムで検索できる
以下詳しく見てみましょう。
パソコン、遺言者の自筆、代筆などで遺言書作成が可能(但し、署名は遺言者の自署が必須)
秘密証書遺言は、遺言者が自筆で書いても代筆で書いてもらっても問題ありません。
その代わり、秘密証書遺言に記入する署名は、遺言者の自署が必須です。
例えば、遺言者が自分で秘密証書遺言をしたためられるぐらい元気な状態であればいいのですが、体調不良で自筆での作成が難しい場合、パソコンを使用したり、別の方に代筆を頼んだりすることができます。
これが秘密証書遺言の最大のメリットと言えるでしょう。
公証役場で遺言書の存在を証明してもらう
公証役場で秘密証書遺言の存在を証明してもらうことができます。
秘密証書遺言は、作成後は公証役場へ持参し、2名以上の証人立会いのもと、公証役場で遺言の存在を記録してもらいます。
そのため、万が一遺言者が秘密証書遺言の存在を誰にも告げずに亡くなったとしても、公証役場の遺言検索システムを利用すれば、遺言が存在することを相続人が知ることができます。
遺言書の「内容そのものは秘密にしたいけど、存在だけは明らかにできる制度」とも言えます。
遺言内容を他人に見られることはない(但し、作成事実自体は公証人と証人2名に知られることになる)
その名の通り、遺言内容を第三者(公証人や証人含む)に知られることは制度上はありません。
秘密証書遺言は自分で作成し、公証役場で遺言書の存在を把握してもらう物なので、少なくとも制度上は中身を他人に見られることはありません。
その分、方式の不備などで遺言内容が無効になる可能性もありますので、その点はクリアできるように、専門家と内容を検討するなど何か対策を立てた方がいいかもしれません。
なお、実務上は、中身は「自筆証書遺言」の要式を満たすように、全文を自署で作成していることが多くあります。
遺言検索システムで検索できる
遺言検索システムで秘密証書遺言を検索できます。
公証役場の関与があるため、遺言検索システムが利用可能となります。これにより、ご遺族(法定相続人)やが受遺者等が遺言者の残した(秘密証書)遺言の存在をしっかり確認することが可能となります。
【POINT!!】
結論として、公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言のメリットの違いをまとめると、次のようになります。
種類 |
内容の法的な誤り |
保管の安全性 |
---|---|---|
公正証書遺言書 |
◎ |
◎ |
自筆証書遺言書 |
△ |
△ |
自筆証書遺言書 |
〇 |
◎ |
秘密証書遺言書 |
△ |
△ |
このように、「公正証書遺言」の方式を用いて作成する場合のもっとも大きなアドバンテージは、「公証人を通して遺言を作成しているので、法令上の要件をきちんと満たした、内容的にも不備のない遺言を効率的に作成できる」という点と言えるしょう。
さらに、公証役場できちんと保管されるため、公正証書遺言の「破棄・紛失・改ざんのリスクがなく、非常に安全に保管できる」ということも大きなメリットに挙げられます。
改めて3種類の遺言書のメリットの比較をしてみて、確実な「安全」「安心」を求めたいならば、公正証書遺言を選ばれることをお勧めします。
3.公正証書遺言の3つのデメリット
さて、前述の通り「公正証書遺言」には7つものメリットがありましたが、一方デメリットもあります。
デメリットの面もきちんと知った上で、公正証書遺言を正しく理解できるように一緒に確認していきましょう。
ここでは公正証書遺言のデメリットを、以下3つに分けて説明していきます。
・費用(公証人手数料)がかかる
・原則として公証役場へ赴き、事前の打ち合わせを行うく必要がある
・証人を2名用意しなければならない
詳しく見ていきましょう。
3-1.費用(公証人手数料)がかかる
公正証書遺言を作成するには、「公証人手数料」という公証人へ支払う費用が必ずかかります。
遺言書の記載内容や受取人の人数、資産の評価額によって算出されるため、個々の事例によって大きな差異が生じますが、大まかな費用(概算)をお伝えしますと、公証役場(公証人)へ支払う作成時の公証人手数料や、その他証人2名へお支払いする日当交通費等を加え、公正証書遺言の作成時には、およそ6万~10万円ほどの費用を見ておいた方がいいでしょう。
さらに、公正証書遺言作成のサポートを専門家(行政書士や弁護士等)に依頼するとなると、専門家への依頼料としてさらに8万~30万円ほどの費用がかかります。
そのため総額で考えると、公正証書遺言の作成(専門家のサポートも入った場合)には、約14万~40万円ほどの費用がかかると考えておきましょう(ちなみに、遺言シェルパを運営する行政書士法人では、原則として作成時の支援報酬は0円となっています)。
なお、費用(公証人手数料)の幅があるのは、以下の要素次第で見積もりが変わってくるからです。
・公正証書遺言に記された財産ごとの資産額
・受取人となる相続人や受遺者の数
・公証人へ出張を依頼した場合の日当交通費
・証人2名への日当交通費(※ご友人の場合は、「謝礼」という形で金銭をお渡しすることがあります。)
・必要書類として、必要な公的書類を発行してもらうための交付手数料
・公正証書遺言の正本・謄本の交付料(ページ数によって金額に変動あり) など
上記で掲げた条件によって費用に変動が出るため、いざあなたが公正証書遺言を作成する際は、一体どれぐらいかかるのか、あらかじめ計算しておくのもいいかもしれません。
公正証書遺言の費用の詳細については、「公正証書遺言の作成にかかる費用は約6~50万円!遺言内容や評価額等により金額が大きく変わる」にて細かく解説していますので、ぜひ参考にしてみて下さいね。
3-2. 原則として公証役場へ赴き、事前の打ち合わせを行うく必要がある
公正証書遺言の作成にあたっては、原則として、遺言者本人が直接公証役場へ足を運ぶ必要があります。
なぜなら公正証書遺言とは、公証役場にて依頼者が遺言内容を口頭で述べ、公証人がその内容を遺言の文面に記述していく形式だからです(当日はさらに証人2名も参加します)。
なお、遺言者が公証役場へ赴くのは、遺言書作成の当日だけではありません。
・遺言の作成について、初回の相談をする(公証役場によっては、メールや電話などでも可能)
・具体的な遺言書の記載について、公証人と打ち合わせをする(公的書類や相続内容のメモ等を持参)
など、状況に応じて公証役場を訪れる機会が複数あります。
(公正証書遺言の作成サポートを専門家にお任せしている場合は、上記の公証役場への事前の訪問や打ち合わせ時の訪問は専門家が代行してくれます。は公正証書遺言の作成日のみ公証役場へ向かいます。詳しくは「6.公正証書遺言を作成するための7ステップ」で解説していますので合わせてお読み下さい。)
その分遺言者側の時間が取られてしまい、遺言作成に係る時間的負担が大きくなります。
3-3.証人2名を用意する必要がある
公正証書遺言を作成するにあたり、証人2名を用意する必要があります。
万が一証人を見つけられない場合は、公証役場で紹介してもらうことも可能ですが、公証役場によっては手配してくれない場合もありますので注意が必要です。
証人2名を選ぶ際は、以下の条件を満たさなければなりません。
証人2名はいずれも、遺言者の方で手配することができますが、①未成年者、②推定相続人、③ 遺贈を受ける者、④ 推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等は、証人になることができません。
引用:日本公証人連合会
つまり、遺言者側が証人を探す場合は以下の条件にひっかからない方を見つける必要があります。
【証人になれない人】
・未成年者
・推定相続人
・遺贈を受ける者
・推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等
上記の条件、つまり遺言書の利害に関わる人でなければ、特に法律の資格保持者などでなくても証人になることが可能です。遺言者の知人や友人などに依頼しても構いませんし、無職の方でも大丈夫です。
【公証役場から証人を紹介してもらう場合の費用相場】
1名につき約6000~7000円
※公証役場によって変わるので確認が必要です。
このように、一定の条件を満たした証人2名を見つけるのが難しい方もいらっしゃるかもしれません。
どうしてもご自身で見つけられない場合は、早めに公証役場へ証人の紹介をお願いしましょう。
もし公証役場が紹介してくれない場合は、当法人のような専門家(行政書士)へ依頼すると良いでしょう。いわゆる「士業」は法律で守秘義務がありますので、遺言書の内容が口外されるようなことはございません。
4.公正証書遺言をお勧めしたい人
大きなメリットもありながら、金銭面や手続き面でデメリットも抱える公正証書遺言による方式ですが、それでは一体どのような方が利用するといいのでしょうか?
以下のような方には、特に公正証書遺言での方式での遺言書作成がお勧めです。
・遺言書をとにかく安全に保管したい方
・体調不良で自宅から動けず、自署も困難な方
・法的に無効の心配がない遺言書を作成したい方
1つずつ詳しく見ていきましょう。
4-1.遺言書をとにかく安全に保管したい方
遺言書をとにかく安全に保管したい方には、公正証書遺言が向いています。
公正証書遺言を作成すると、
・原本
・正本
・謄本
の3種類が交付されますが、そのうち原本を公証役場へ預ける仕組みに仕組みになっているため、遺言書の紛失や破棄、改ざんなどのリスクがなく安心です。
一方、正本と謄本は遺言者が保管しますが、万が一この2つを紛失してしまっても、原本が公証役場にあるため慌てずに済みます。
自筆証書の場合(自分で保管する場合)は、せっかく自筆証書遺言を作成しても、紛失してしまえば、無効となってしまいます(無いもので手続きは出来ない)。
4-2.体調不良で自宅から動けず、自署も困難な方
体調不良で自宅や病院から動けない方は、公正証書遺言がお勧めです。
なぜなら、公正証書遺言の作成にあたっては、公証人が遺言者の希望に応じて出張をしてきてくれるからです。
そのため、遺言書が動けない状態であっても、希望の場所に公証人に出張してもらうことで、公正証書遺言を作ることが可能です。自署が出来ない場合でも、公証人が代筆可能という点でも便利な方式となります。
4-3. 法的に無効の心配がない遺言書を作成したい方
法的に無効の恐れがない遺言書を作成したい場合は、公正証書遺言がベストでしょう。
前述したように、公正証書遺言は公証人を介して作成する方式であり、法的にも遺言内容の有効性が認められる遺言書の作成方法です。
公正証書遺言は公証人のもと、遺言書の記載内容に法的に抜け漏れや瑕疵(法的な不備等)がないかなどを確実にチェックしながら作成する内容なので、自筆証書遺言等と比べて遺言内容通りに実行されるケースがほとんどです。
日本公証人連合会でも、公正証書遺言の確実性について次のように述べています。
公正証書遺言は、公証人という法律の専門家が関与するので、複雑な内容であっても、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言にしますし、もとより、方式の不備で遺言が無効になるおそれもありません。また、公正証書遺言は、遺言をその場で訂正する場合でも、公証人が責任をもって訂正手続を行うので、安心です。
引用:日本公証人連合会
上記で触れている通り、公証人は依頼者から口頭で聞いた遺言内容を、法律的に整備された状態で整理していきます。そのため無効になりにくく、安心して遺言を残すことができるのです。
ぜひ参考にしてみて下さいね。
5.公正証書遺言を作成するなら、行政書士に依頼するのがお勧め
公正証書遺言のメリットを知って、「ぜひ公正証書遺言を作成したい!」と思われた方も多いことでしょう。
公正証書遺言の作成にあたっては、ご自身で公証役場とやりとりしていただくこともできますが、法的に間違いのない遺言を少しでもスムーズに作成したければ、当法人(行政書士法人エベレスト)のような「行政書士」に依頼することをお勧めします。
なぜなら行政書士は、相続手続き(遺産整理業務)や遺言執行手続きに必要な書類作成・書類取得などに長けており、以下のようなサポートで依頼者様にしっかり寄り添えるからです。
行政書士の中には、相続関係業務を行っていない行政書士も少なくありませんが、行政書士自体が全国に5万人以上存在する社会的かつ制度的な基盤となっていますので、きっとお近くでも相談できる方が見つかることでしょう。
・公正証書遺言の記載内容について助言できる
・公正役場との打ち合わせを代行できる
・必要な書類収集を依頼できる
・証人2名になってもらえる
1つずつ見ていきましょう。
5-1.公正証書遺言の記載内容について助言・起案できる
公正証書遺言(権利義務に関する書類)への具体的な記載方法を、遺言者様と共に考え、助言・起案させていただきます。但し、遺言書の記載内容そのものについては、遺言者自身で考える必要があります。誰に渡すかなど、遺言書内容そのものに関することについては、遺言者自身以外の方が考えることはできません。
公正証書遺言を作成する際は、原則として遺言者から公証役場へあらかじめ「相談内容のメモ」を提出することになります。
相続内容のメモや必要資料の提出
相談や遺言書の作成に当たっては、相続内容のメモ(遺言者がどのような財産を有していて、それを誰にどのような割合で相続させ、または遺贈したいと考えているのかなどを記載したメモ)を、メール送信、ファックス送信、郵送等により、または持参して、公証人にご提出下さい。
しかし、ご自身の財産状況を正確に把握するのが難しかったり、相続人が複数人いて、遺言書の内容をどのように整理して記載すべきか混乱してしまったりする場合もあります。
このような場合でも、行政書士法人エベレストでは、遺言者様の状況を丁寧にお伺いし、上記内容について情報の漏れがないよう整理させていただきます。
公正証書遺言の記載内容が法的にきちんと「執行」できるよう、専門家の観点からアドバイスいたします。但し、遺言内容について関与することはできないため、その点はくれぐれもご注意ください。
5-2.公正役場との打ち合わせを代行できる
公証役場(公証人)との打ち合わせを代行します。
公証役場は全国に約300か所ありますが、原則として遺言者様のお住まいから最も近い公証役場にて、担当される「公証人」の先生型とのやりとりを代行させていただきます。
遺言者様は、遺言書を作成する当日のみ、公証役場へおいでいただければ結構です。
それまでに必要な公証役場への書類持参や送付などについては、「行政書士法人エベレスト」へお任せ下さい。
遺言者様が時間に縛られることなく、公正証書遺言の作成にスムーズに臨めるようサポートいたします。
5-3.必要な書類収集を依頼できる
公正証書遺言の作成に必要な各種公的書類等の収集を代行させて頂くことが可能です。
公正証書遺言を作成する際は、以下のような書類が必要になります。
❶遺言者本人の3か月以内に発行された印鑑登録証明書
ただし、印鑑登録証明書に代えて、運転免許証、旅券、マイナンバーカード(個人番号カード)、住民基本台帳カード(同カードは平成27 年12 月に発行を終了していますが、有効期間内であれば利用できます。)等の官公署発行の顔写真付き身分証明書を遺言者の本人確認資料にすることもできます。
❷遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本や除籍謄本
❸財産を相続人以外の人に遺贈する場合には、その人の住民票、手紙、ハガキその他住所の記載のあるもの。法人の場合には、その法人の登記事項証明書または代表者事項証明書(登記簿謄本)
❹不動産の相続の場合には、その登記事項証明書(登記簿謄本)と、固定資産評価証明書または固定資産税・都市計画税納税通知書中の課税明細書
❺預貯金等の相続の場合には、その預貯金通帳等またはその通帳のコピー
❻なお、Q1で説明したように、公正証書遺言をする場合には、証人2名が必要ですが、遺言者の方で証人を用意される場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日および職業をメモしたものをご用意下さい。
なお、事案に応じ、他にも資料が必要となる場合もありますので、詳細は、最寄りの公証役場にお尋ね下さい。
引用:日本公証人連合会「3 公正証書遺言の作成 Q3.公正証書遺言をするには、どのような資料を準備すればよいでしょうか?」より
上記をご覧いただくとわかるように、「公正証書遺言」を作成する際には、遺言者の印鑑登録証明書や戸籍謄本、不動産に関する「登記事項証明書」の取得やその他諸々の公的書類が必須になります。
書類によっては、入手するまでに時間のかかるものもあり、間違いなく書類を揃えるためには、書類収集に長けている行政書士が活躍します。
※なお、書類の取得にあたっては、遺言者ご本人の「委任状」を頂きます。
※印鑑証明書の取得代行は致しかねます。
※こちらはオプションサービスとして、選択いただけます。
5-4.証人2名になってもらえる
行政書士は証人になることが可能です。法律上も守秘義務があるため、ご安心頂けます。
「3-3.証人2名を用意する必要がある」でもお伝えしたように、公正証書遺言を公証人と作成する際は、その場に証人2名を用意する必要があります。
もちろん遺言者様がご自身で証人を探せる場合や、公証役場へ証人を用意してくれるよう依頼することも可能です。但しご自身で証人を探す場合は、下記のように一定の条件を満たした人を証人として用意する必要があります。
【証人になれない人】
・未成年者
・推定相続人
・遺贈を受ける者
・推定相続人および遺贈を受ける者の配偶者および直系血族等
証人2名が見つからずお困りの場合は、ぜひ行政書士法人エベレストへご相談下さい(証人だけの立ち合いも承っております)。
6.公正証書遺言を作成するための7ステップ
他の遺言書の作成方式に比べて、様々なメリットの多い公正証書遺言ですが、作成までの手間が複雑で大変だと迷われている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
確かに公正証書遺言は、法的に守られたきちんとした遺言形式であるため、作成までのステップは簡単ではありません。公証役場との調整や証人2名の立ち合いが必要不可欠だからです。
しかし、以下のように一つ一つ流れを押さえていくことで、誰でも間違いなく公正証書遺言を完成させることができます。
ここでは日本公証人連合会の情報を参考に、作成までのステップを7つに分けてご紹介していきます。
6-1.公証人へ遺言の相談&遺言書作成の依頼をする
まずはお住まいのお近くにある公証役場へ連絡しましょう。
電話やメール、もしくは予約を取って直接公証役場を訪れることで、公証人に遺言の相談や遺言書作成の依頼をします。
公証役場一覧は以下よりご確認いただけます。
ぜひ参考にしてみて下さい。
出典:日本公証人連合会
6-2.相続内容のメモ・必要書類を用意&提出する
公証人と相談する際は、以下のメモが必須です。
予め内容をまとめておきましょう。
【相談内容のメモ】
・遺言者の財産が全部でどれくらいあるのか
・誰に何をどれくらいの割合で相続、または遺贈したいのか
「相談内容のメモ」が完成したら、
・メール送信
・ファックス送信
・郵送
・直接公証役場へ持参
などいずれかの方法で公証人の手元へ共有しておきます。
このメモが公正証書遺言に盛り込まれる遺言内容になりますので、大変重要です。内容に誤りがないかどうか、法的に問題がないかどうか、慎重にメモの内容をまとめていきましょう。
6-3.必要書類を収集する
公証役場で指示された必要書類を収集していきます。公正証書遺言の作成時に必要となる書類については、「5-3.必要な書類収集を依頼できる」で詳しく述べていますが、遺言者のケースによって収集すべき書類も変わってきます。
ご自身がどのような書類を用意すべきなのか、公証人にきちんと確認してすべてが間違いなく揃うように気を付けます。特に、「印鑑登録証明書」については3か月以内に発行されたものと決まりがあります。
その他書類についても、有効期限を定めているかどうかは予め公証役場に確認しておくといいでしょう。
6-4. 遺言公正証書(案)の作成と修正をする
公証人が作成した「遺言公正証書(案)」が送られてきたら、修正個所があるかどうか確認しましょう。
公証人は、遺言者が事前に提出した「相談のメモ」や必要資料に基づき、遺言公正証書(案)を作成してくれます。メールなどで遺言者に送られてくるので、遺言者は修正個所の有無をチェックします。
遺言者からの修正指示に従い、公証人は遺言公正証書(案)を修正し、確定することになります。
6-5.公正証書遺言の作成日を決める
いよいよ公正証書遺言の作成日を決めます。
公正証書遺言の作成は、遺言者・公証人・証人が揃った場で行われます。
公証役場を訪問できる日を打ち合わせしましょう。
もし遺言者の体調不良などで公証役場に行くのが難しい場合は、公証人が遺言者の自宅や病院、施設まで出張してくれます。出張が必要な場合は、公証人にあらかじめ相談しておきましょう。
ちなみに、公証人が出張して公正証書遺言を作成した場合は、公証役場へ支払う公正証書遺言の作成手数料が約1.5倍となります。いざという時に慌てないよう念頭に置いておきましょう。
6-6.証人2名を用意する
同時に、当日立ち会ってくれる証人2名も探しておきましょう。
証人の役割は、当日作成される公正証書遺言が問題なく作成されたかどうかを見届けることです。
公正証書遺言をするためには、遺言者の真意を確認し、手続が適式に行われたことを担保するため、証人2名の立会いが義務づけられていますが、証人2名は、いずれも遺言者の方で準備することができます。
ちなみに、証人は遺言者の知人や友人でも構いませんが、条件によっては証人になれない方もいますので注意が必要です。見つからない場合は、行政書士などの法的に守秘義務のある専門家を手配すると良いでしょう。
詳しくは「3-3.証人2名を用意する必要がある」で解説しています。
ぜひ参考にしてみて下さい。
6-7.当日、公正証書遺言を作成する
予約した日になりましたら、公証役場へ向かいましょう。
公証役場では次のような流れで、公正証書遺言の作成が行われます。
【公正証書遺言の作成の流れ】
①遺言者本人から公証人に対し、遺言の内容を口頭で述べる。証人2名も同席する。
↓
②公証人は、判断能力を有する遺言者からの遺言であることを確認した上で、確定した遺言公正証書(案)に基づきあらかじめ準備した遺言公正証書の原本を、遺言者および証人2名に読み聞かせ、または閲覧させて、遺言の内容に間違いがないことを確認してもらう
↓
③内容に誤りがあれば、その場で修正する
↓
④遺言の内容に間違いがない場合は、遺言者および証人2名が、遺言公正証書の原本に署名し、押印をする
↓
⑤公証人も遺言公正証書の原本に署名し、職印を押捺することによって、遺言公正証書が完成する
参考:日本公証人連合会を参考に流れを作成
この後、公正証書遺言の原本、正本、謄本が交付され、原本は公正役場にて保管し、正本と謄本は遺言者が保管することになります。
このように公正証書遺言の作成にあたっては、遺言当日までの事前準備や打ち合わせ、資料の用意など1つずつクリアすべきステップがあります。
遺言作成がスムーズに行えるよう、慎重に各ステップを進めていきましょう。
専門家に依頼すればこれだけ省略できます!
1.公証人へ遺言の相談&遺言書作成の依頼をする
⇒省略できます(代行可能)。
2.相続内容のメモ・必要書類を用意&提出する
⇒省略できます(代行可能)。
3.必要書類を収集する
⇒省略できます(代行可能。但し、印鑑証明書だけは代行取得が出来ません。)。
4. 遺言公正証書(案)の作成と修正をする
⇒省略できます(代行可能)。
5.公正証書遺言の作成日を決める
⇒遺言者ご本人に相談の上、公正証書遺言の作成日を決め、公証役場へ伝えます。
6.証人を用意する
⇒行政書士が証人になれますので、別途証人を用意する必要がありません。
行政書士との下記打ち合わせがあるため、上記6ステップは省略可能です。
【公正証書遺言作成に係る初回無料相談】
対面またはオンライン面談にて、公正証書遺言の作成に関するご相談を受け付けております。親族間のトラブルを避けるため、ご相談の際は必ず遺言者ご本人の同席をお願いいたします。
【遺言書(付言事項含む)起案サービス】
遺言者様のご意向に従った遺言書の記載方法を考えます。
素案についてご確認頂きましたら、行政書士を通じて「公証人」への起案依頼を致します。
【公証役場(公証人)との打合せ代行】
公証役場(公証人)との打ち合わせを代行します。
原則として、遺言書作成当日を除き、遺言者様が公証役場へ足を運んだり、直接公証役場へ資料を郵送・持参したりする必要はありません。
【必要書類の収集代行サービス】
必要書類の収集を代行します。
・戸籍謄本等の写しの取得
・不動産に係る登記事項証明書の取得など
遺言書を作成する上で必要となる公的書類を収集いたします。
その際は遺言者様の委任状をいただきます。
※任意のオプションサービスとなります。
※印鑑証明書の取得代行は致しかねます。
7.当日、公正証書遺言を作成する
⇒遺言者様と公証役場へ伺い、公正証書遺言を作成します。
上記をご覧いただくとわかるように、行政書士に依頼することで公正証書遺言作成のためのほとんどのステップが省略できます。しかも、法律のプロとして公正証書遺言の起案や書類収集、公証役場との打ち合わせを進めていきますので、ぜひ安心してお任せ下さい。
7.まとめ
今回は公正証書遺言の7つのメリットについて、ご紹介しました。
【公正証書遺言の7つのメリット】
①作成時の公証人の関与により無効になりにくい(公的な証明力が高い)
②公証役場で安全に保管されるため、偽造・変造リスクが極めて低い
③全文を遺言者が自署する必要がない(自筆の負担がない)
④公証人の出張も可能であり、原則として場所の制限なく作成が可能
⑤検認手続きを行うことなく、遺言執行(相続手続き)が可能
⑥「遺言検索システム」により、公正証書遺言の検索が制度上可能
⑦「原本・正本・謄本」と分けて管理が可能(※自筆の場合は原本1通のみ)
自筆証書遺言や秘密証書遺言などの遺言形式と比べて、公正証書遺言は、「公証人を通して遺言を作成しているので、法令上の要件をきちんと満たした、不備のない遺言を作成できる」という点が大きな利点となります。
さらに、公証役場できちんと保管されるため、公正証書遺言の「破棄・紛失・改ざんのリスクがなく、非常に安全に保管できる」という点も大変魅力的です。
もしあなたが公正証書遺言で遺言を作るべきかどうか悩まれているならば、ぜひ安心・安全面で十分な対策ができている公正証書遺言を選択しましょう!
本記事があなたの悩みを少しでも払拭できるお手伝いができたのなら幸いです。遺言書についてご不明な点がありましたら、遺言シェルパ名古屋(運営:行政書士法人エベレスト)へお気軽にご相談ください。