遺言コラム

公正証書遺言がある場合の銀行手続き方法|遺言執行者がいるケース・いないケース

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公正証書遺言について
公正証書遺言がある場合の銀行手続き方法|遺言執行者がいるケース・いないケース

「公正証書遺言がある場合の銀行手続きって誰が、どうやってするもの?」
「遺産を早く受け取りたいけど、銀行の相続手続きには何が必要?」

このような悩みをお持ちではないでしょうか。

公正証書遺言に基づく銀行での相続手続きは、

・遺言執行者が指定されている場合
・遺言執行者が指定されていない場合

の2つのケースで、「手続きをする人」「必要な書類」が異なります。

この記事では、公正証書遺言を用いた銀行での相続手続きについて、2つのケース別にくわしく解説していきます。

銀行での相続手続きは意外にも煩雑であるため、特に遺言執行者が指定されていないケースでは、相続人全員での協力や意見調整に難航し、結果的に長期間放置してしまうこともあります。

相続手続きを放置したからといって罰則などはありませんが、後に手続きする際に未利用口座管理手数料がかかったり、​​10年以上の長期にわたって放置した場合は、「休眠口座」になってしまい、復活させるのに余分な手続きが必要になる場合があります。

記事の後半では、こうした「銀行での相続手続きに関する注意点」を解説しますので、ご不安な方はぜひ参考にしてください。

この記事をおすすめしたいのはこんな人です!
・公正証書遺言がある場合の銀行手続きについて知りたい人
・公正証書遺言がある場合の銀行での相続手続きをするのは誰かを確認したい人
・公正証書遺言の執行で、銀行での必要書類を詳しく知りたい人
・公正証書遺言の内容を滞りなく実現させたい人
・公正証書遺言の執行を完了させて、遺産を早く受け取りたい人

本記事を読むことで、「公正証書遺言」がある場合の銀行手続きについて、その手順や手続きの内容が具体的に理解できます。

相続手続きをスムーズに進めて大切な方の遺言を実現できるよう、この記事を大いに役立てて頂けたらと思います。

1.【全体の流れ】「公正証書遺言」がある場合の銀行手続きを解説

【全体の流れ】「公正証書遺言」がある場合の銀行手続きを解説

まず1章では、公正証書遺言に基づいた銀行手続きの「全体の流れ」を把握していきましょう。

公正証書遺言がある場合の銀行手続きの内容は、

・遺言執行者が指定されている場合
・遺言執行者が指定されていない場合

の、2つのケースで異なります。

あなたのケースは、どちらに該当しているでしょうか。

具体的な必要書類や手続きが出来る方については、各金融機関の取り決め(ルール)や遺言書の記載のされ方などにより多少の差異は生じますが、一般的な場合の「手続きをする人」と「必要書類」の遺言執行者の有無による差異を表形式にしましたので、ご覧ください。

言執行者指定の有無

手続きする人

必要書類

指定されている場合

原則として遺言執行者
(※2)

①(遺言者の死亡が記載された)​​戸籍謄本等
(※1) 及び承継者の戸籍抄本


②(遺言執行者の)​​実印
 ※捺印や捺印漏れに対応するため


③遺言執行者の印鑑登録証明書(原本)


④遺言書(正本又は謄本の原本)


⑤(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)


⑥(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

指定されていない場合

遺言書に記載されている承継者(が最も円滑)

①(遺言者の死亡が記載された)戸籍謄本等
(※1)及び承継者の戸籍抄本


②(承継される方の)戸籍抄本(※1)(※3)


③(承継される方の)実印
 ※捺印や捺印漏れに対応するため


④(承継される方の)印鑑登録証明書の原本


⑤遺言書(正本又は謄本の原本)​​


⑥(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)


⑦(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

(※1)法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出する場合は、戸籍謄本の提出は原則不要になります。遺言書の内容を金融機関へ知らせて、必要書類の確認をとってもらうようにしましょう。

参照:法務省|法定相続情報証明制度について

(※2)遺言執行者が裁判所に選任されている場合は、遺言執行者選任審判書の原本が必要になります。

(※3)遺言者と同一戸籍の方については不要な場合があります。​​

銀行手続きは、大まかにまとめると以下のような順番で執行されます。

①死亡連絡:(遺言執行者または相続人代表者等が)手続きする銀行(支店又は相続手続きの担当部署)に連絡​​する(※1)
②書類収集:(遺言執行者または相続人代表者等が)必要書類を準備する(遺言書、故人の戸籍謄本、遺言執行者や承継者の印鑑登録証明書など)
③書類提出:(遺言執行者または遺言書に記載された承継者等が)銀行に必要書類及び所定の相続手続き書類を提出する
④承継完了:(遺言執行者または遺言書に記載された承継者等が)銀行による該当口座の解約・払い戻し、定期代性預金の名義変更等の承継手続きの完了書類を受け取る(※2)

(※1)原則として、銀行に連絡をした時点で、その銀行にある故人の口座が凍結され、全ての入出金ができなくなります。​​​

(※2)手続き完了までの期間については銀行や状況によって異なります​​。目安としては、書類提出から1週間〜2週間後です。但し、投資信託口座や国債などの債権管理口座がある場合など、書類提出完了から解約手続きの完了まで、1か月半以上の日数が必要になる場合もあるため、急ぎの場合は各金融機関に確認するようにしましょう。

次章からは、遺言執行者が指定されている場合、指定されていない場合、各々のケースについて、内容を詳しく解説していきます。

 Check! 

【必要書類は、銀行内の処理規定や遺言書の記載内容によって変わる】

本記事では、公正証書遺言に沿った一般的な銀行の相続手続きについて紹介しますが、必要書類及び相続手続きの流れは、各銀行によって、また遺言書の記載の内容により異なります。​​

実際に相続手続きをする際には、予め所定の銀行に問い合わせて、状況や遺言書の記載内容に応じた必要書類を確認するようにしてください。相続手続きに慣れている行政書士等の専門家であれば、ある程度の判断が付きますので、専門家に聞いてみても良いでしょう。お近くに専門家がいない場合は、ぜひ「行政書士法人エベレスト」へご相談下さい。

2.公正証書遺言がある場合の銀行手続き|「遺言執行者が指定されている」ケース

公正証書遺言がある場合の銀行手続き|「遺言執行者が指定されている」ケース

公正証書遺言がある場合の遺言執行手続きで、「遺言執行者が指定されている」ケースの銀行手続きついて解説します。

①銀行手続きは「遺言執行者」が単独で行う
​​②遺言執行者が指定されているケースの​​「必要書類」

順にみていきましょう。

2-1.銀行手続きは原則「遺言執行者」が単独で可能

​​このケースでの銀行手続きは、原則として遺言執行者が単独で行うことが可能です。

遺言執行者は、遺言の内容を実現するために必要な権利義務を持った人なので、「基本的には」その遺言執行者の「本人確認」ができれば、他の相続人の協力を得ずに、単独で銀行での相続手続きが執行できます。なお、根拠となる「民法」では、以下のように規定されています。

(特定財産に関する遺言の執行)

第千十四条 前三条の規定は、遺言が相続財産のうち特定の財産に関する場合には、その財産についてのみ適用する。

 遺産の分割の方法の指定として遺産に属する特定の財産を共同相続人の一人又は数人に承継させる旨の遺言(以下「特定財産承継遺言」という。)があったときは、遺言執行者は、当該共同相続人が第八百九十九条の二第一項に規定する対抗要件を備えるために必要な行為をすることができる。

 前項の財産が預貯金債権である場合には、遺言執行者は、同項に規定する行為のほか、その預金又は貯金の払戻しの請求及びその預金又は貯金に係る契約の解約の申入れをすることができる。ただし、解約の申入れについては、その預貯金債権の全部が特定財産承継遺言の目的である場合に限る。

 前二項の規定にかかわらず、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、その意思に従う。

御覧のとおり、現行法では上記のように法律で規定されていますが、当該部分の民法改正が行われる前においては、「(法定相続人の一人又は複数人に)相続させる」という遺言書の文言については、「遺産分割方法の指定」と推定され、相続開始と同時に効力が生じるため、そこに遺言執行者の執行行為は介在し得ない(執行者の出る幕がない)という趣旨の判例がありました(余談ですが、最高裁判所の判例変更があるまで、預貯金債権は、可分債権であるから、そもそも共同相続人間で行う遺産分割の対象とはならないともされていました)。

そのため、法改正前においては、少数の金融機関ではありましたが、金融機関によっては遺言執行者が指定されていても、その遺言執行者は手続きができず、承継者(又は法定相続人全員)の押印や印鑑証明書原本を求められてしまうケースがありました。

この点、法改正によって、少なくとも「特定財産承継遺言」においては、多くの金融機関の実務に則して、遺言執行者が単独で手続きできることが明確になりました。

なお、包括的な記載がされた遺言書であり、「特定財産承継遺言」とは解釈できない遺言書の場合においては、「遺言執行者が指定されていても、その遺言執行者では手続きが出来ないことが明確になった」法改正だともいえるため、結局は、各金融機関の指示に従う形となります。

このように、銀行手続きは「意外に」煩雑で難しい場合がありますが、少なくとも後で説明する「遺言執行者が指定されていないケース」に比べると、早く、スムーズに手続きを進められると言えるでしょう。

 Check! 

【遺言執行者とは】

遺言執行者とは、遺言書の内容が実行されるように必要な行為や手続きをする人のことです。

遺言執行者はその任に選定されると、遺言を実現するために強力な権限を行使できます。

遺言執行者の選任方法は3通りあります。

①(遺言者が)遺言書で遺言執行者を指定する

②(遺言者が)遺言書で「遺言執行者を指定する人」を指定する(※実務上、あまり例がありません)

③(相続人等が事後的に)家庭裁判所に選任の申し立てをする

③は、遺言者から遺言執行者について何も指定されていない場合や、指定されていた人が先に亡くなっていた場合や、就職を拒否されてしまった場合等の選任方法です。

遺言執行者は、未成年者と破産者以外であれば、行為能力がある限り、相続人や親族以外の第三者(弁護士、行政書士などの専門家)も就任することが可能です。また、自然人に限らず、株式会社などの「法人」でも構いませんし、複数人を選任することも可能です。

さて、次に、遺言執行者が指定されている場合の、「必要書類」を確認していきましょう。

2-2.遺言執行者が指定されているケースの​​「必要書類」

遺言書執行者が、遺言書に沿って手続きをする際の必要書類は大きく分けて6種類です。

必要書類

概要

①(遺言者の死亡が記載された)​​戸籍謄本等及び承継者の戸籍抄本

遺言者の死亡の事実について、戸籍謄本や除籍謄本で確認します。


また、遺言書内で承継者等として記載されている方が、相続開始時点で存命かどうかを確認するため、承継者等の戸籍抄本も併せて必要となります。


戸籍謄本等は、「本籍地」を管轄する役所で取得できます。(※1)

②(遺言執行者の)​​実印

※捺印や捺印漏れに対応するため

遺言執行者の本人確認のため、お住まいの役所で実印登録をした印鑑が必要です。


こちらを持参し、窓口で⑤(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)に捺印をします。


もし、捺印したものを持参する場合であっても、捺印漏れに対応するため、窓口で手続きをする場合には、実印は忘れずに持っていくようにしましょう。

③遺言執行者の印鑑登録証明書(原本)

「実印」が役所で登録されていることを証明する書類です。


実印登録をした役所で取得します。(※3)

④遺言書(正本又は謄本の原本)

公正証書遺言の「正本」又は「謄本」の原本が必要です。


いずれも遺言内容を証明する書類であり、遺言作成時に公証役場から交付を受けているものをそのまま使用できます(紛失の場合は、「謄本」の再取得が可能)。​​

⑤(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)

各金融機関の所定の書類で、窓口等で取得して記入します。


なお、電話して郵送で送ってもらえる金融機関が多いため、なかなか窓口に行けない方は最初に電話してみると良いでしょう。また、WEBサイトから手続き用紙やご案内のダウンロードが可能な金融機関も増えてきています。


書類の名称は、各金融機関によって「相続手続依頼書」や「相続に関する依頼書」など名称が違います。

⑥(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

遺言者の通帳やキャッシュカードの原本を準備します。


万一、ない場合も、「紛失」として手続きはできますが、「紛失届」等の追加書類を求められることがあります。

遺言執行者が家庭裁判所に選任されている人の場合は、この他に「遺言執行者選任審判書」(※3)が必要になります。

(※1)法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出する場合は、被相続人が亡くなられたことおよび相続人を確認するための戸籍謄本の提出は原則不要になります。遺言書の内容を金融機関へ知らせて、必要書類の確認をとってもらうようにしましょう。

参照:法務省|法定相続情報証明制度について

(※2)遺言執行者が裁判所に選任されている場合は、遺言執行者選任審判書の原本が必要になります。

(※3)遺言者と同一戸籍の方については不要な場合があります。

 Check! 

(※1)【法定相続情報制度とは】

法定相続情報証明制度とは、平成29年5月に施行された各種相続手続きにおいて何度も戸籍謄本の束を出す必要がなくなる制度です。

この制度では、登記所(法務局)に戸籍謄本などの束の原本を全てそろえて過不足なく原本一式を提出し、併せて「法定相続情報一覧図」(相続関係を一覧にした図)を提出すれば、登記官がその一覧図に認証文を付した写しを無料で交付してくれる仕組みになっています。

以前は、原則として相続手続きにおいて被相続人の法定相続人を確定させるための戸籍謄本等の束を、各種窓口に何度も出す必要がありましたが、法定相続情報一覧図の写しを利用することで戸籍謄本の束を何度も出す必要がなくなりました。

しかし、この制度を利用するために、収集が必要な戸籍謄本等の範囲に変更が生じたわけではないため、相続人側の負担はそれほど大きく変わっていない点にも留意する必要があります。

この制度で恩恵を受けたのは、金融機関側であり、この「法定相続情報一覧図の写し」の提供があれば、戸籍謄本等の束を確認する手間が省かれることになりました。金融機関側にとっては大変ありがたい制度になっています。

参照:法務省|法定相続情報証明制度について

3.公正証書遺言がある場合の銀行手続き|「遺言執行者が指定されていない」ケース

公正証書遺言がある場合の銀行手続き|「遺言執行者が指定されていない」ケース

公正証書遺言には多くの場合「遺言執行者」についての指定がありますが、中には記載がない、もしくは指定された遺言執行者が遺言者よりも先に死亡していたり、就職を辞退されてしまうことがあります。

このような場合、「家庭裁判所」に遺言執行者選任の申し立てをしたり、遺言執行者は選任せずに、相続人全員で話し合って遺言書の執行を進めたりする​​ケースがあります。

ここでは、この「遺言執行者が指定されていない」​​⇒「相続人全員で話し合って、遺言書の執行を進める」ケースの銀行手続きについて解説します。

・手続きは「遺言書に記載されている承継者」が行う
・​​遺言執行者が指定されていないケースの​​「必要書類」

順にみていきましょう。

3-1.手続きは「遺言書に記載されている承継者」が行う

​​公正証書遺言に有効な遺言執行者の記載がなく、家庭裁判所に対しても遺言執行者の選任を申し立てない場合、公正証書遺言の内容に沿った銀行手続きは、原則として「遺言書に記載されている承継者」が自ら行うことになります。

なお、承継者ではない、任意の相続人の代表者で手続きを進めることも考えられますが、承継者や相続人全員からの委任状を求められるケースもあるため、あまりお勧めはしません。

金融機関側からすれば、「承継者=正当な権利者=手続きを求める正当な理由を有する」と考えられるため、遺言執行者がいない場合には、遺言書に記載されている承継者からの手続きが最も円滑に進むでしょう。

次に、準備する必要書類を確認していきましょう。

3-2.遺言執行者が指定されていないケースの​​「必要書類」

遺言書に記載されている承継者が、公正証書遺言の内容に沿って手続きをする際の必要書類は7種類です。必要な書類としてはほとんど相違ありませんが、「承継者の」ものが必要となります。

必要書類

概要

①(遺言者の死亡が記載された)​​戸籍謄本等及び承継者の戸籍抄本

遺言者の死亡の事実について、戸籍謄本や除籍謄本で確認します。


また、遺言書内で承継者等として記載されている方が、相続開始時点で存命かどうかを確認するため、承継者等の戸籍抄本も併せて必要となります。


戸籍謄本等は、「本籍地」を管轄する役所で取得できます。(※1)

②(承継される方の)戸籍抄本

確認書類として、全ての相続人の現在の戸籍謄本が必要です。(※1)(※2)


本籍地を管轄する役所で取得できます。

③(承継される方の)​​実印

代表者の本人確認のため、お住まいの役所で実印登録をした印鑑が必要です。

④(承継される方の)印鑑登録証明書

相続人全員分の印鑑登録証明書が必要です。


実印登録をした役所で取得します。(※3)

⑤遺言書(正本又は謄本の原本)

公正証書遺言の「正本」又は「謄本」の原本が必要です。いずれも遺言内容を証明する書類であり、遺言作成時に公証役場から交付を受けているものをそのまま使用できます(紛失の場合は、「謄本」の再取得が可能)。​​

⑥(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)

各金融機関の所定の書類で、窓口等で取得して記入します。


なお、電話して郵送で送ってもらえる金融機関が多いため、なかなか窓口に行けない方は最初に電話してみると良いでしょう。


また、WEBサイトから手続き用紙やご案内のダウンロードが可能な金融機関も増えてきています。


書類の名称は、各金融機関によって「相続手続依頼書」や「相続に関する依頼書」など名称が違います。

⑦(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

遺言者の通帳やキャッシュカードの原本を準備します。


万一、ない場合も、「紛失」として手続きはできますが、「紛失届」等の追加書類を求められることがあります。

(※1)法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出する場合は、被相続人が亡くなられたことおよび相続人を確認するための戸籍謄本の提出は原則不要になります。遺言書の内容を金融機関へ知らせて、必要書類の確認をとってもらうようにしましょう。

参照:法務省|法定相続情報証明制度について

(※2)遺言執行者が裁判所に選任されている場合は、遺言執行者選任審判書の原本が必要になります。

(※3)遺言者と同一戸籍の方については不要な場合があります。

4.公正証書遺言の執行|銀行手続きに関する3つの注意点

公正証書遺言の執行|銀行手続きに関する3つの注意点

公正証書遺言がある場合の銀行手続きについて、あなたの立場では何を準備すればいいか把握できましたでしょうか。

金融機関ごとに多少の差異があるものの、概ね必要な書類は共通しています。収集が難しい書類があれば、「遺言シェルパ名古屋」を運営する行政書士法人エベレストへお気軽にご相談ください。

さて、ここでは、銀行での相続手続きに関する3つの注意点を解説していきます。

・相続開始後に預金をATMで引き出すと「相続放棄」ができなくなる場合がある
・​​相続手続きを長期間放置すると、後の銀行手続きが煩雑になる
・銀行での相続手続きは、書類を全て提出できたとしても、完了までに1週間以上かかることがある

4-1.相続開始後に預金をATMで引き出すと「相続放棄」ができなくなる場合がある

注意点の1つ目は、相続手続きが完了する前に、遺言者の銀行口座から預金を引き出すと「相続放棄」ができなくなる可能性があることです。

「相続放棄」は、被相続人の財産について、たとえ一部であっても、処分(消費することや売却すること)してしまった後では、相続することを承認したものとみなされてしまい、原則として認められないことになっています。

これを「法定単純承認」と呼び、以下の通り民法に規定されています。

(単純承認の効力)
第九百二十条 相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。

(法定単純承認)
第九百二十一条 次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。

一 相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。

二 相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。

三 相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。

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【相続放棄とは】

相続放棄とは、亡くなった人の財産について相続する権利を全て放棄し、(法律上は)初めから相続人ではなかったこととする制度です。

亡くなった人に借金やローンなどのマイナスの財産がある場合の選択肢の1つですが、家庭裁判所で法定期限内(熟慮期間内)に相続放棄の申述をすると、マイナスの財産だけでなく、プラスの財産もすべて放棄することになります。

債権者からすれば、相続人が相続放棄をすると、相続を理由として、相続人に債務の弁済などを請求することが出来なくなるため、相続放棄が受理されるかどうか、有効か否かは大きな関心ごとです。

銀行口座の預金を引き出してしまったことで相続放棄ができなくなると、ローンの支払いや、借金返済などのマイナス財産も相続せざるを得なくなります。

プラスの財産が、マイナスの財産額を上回っていればまだしも、債務超過である場合は、経済的に大きな負担を背負うこととなってしまいます。

相続放棄をお考えの方は、ATMでの引き出しを安易に捉えて、不利益を被ることのないように注意しましょう。

また、仮にマイナスの財産がないか少額であり、「相続放棄」を考えていない場合であっても、正当な金融機関所定の相続手続きを完了するまでに(口座凍結がされていないからといって、)ATMから預貯金を引き出すことは、親族間のトラブルに繋がる場合があるので​​、専門家として全くおすすめできません。

4-2.相続手続きを長期間放置すると、後の銀行手続きが煩雑になる

2つ目の注意点は、銀行手続きを長期間しないで放置していると、後の銀行手続きが煩雑になってしまうことです。

具体的には次のようなリスクにつながる可能性があるということです。

・凍結された口座を数年間放置すると、「未利用口座管理手数料」がかかる場合がある

・法定相続人間の合意成立により、預金を相続したはずの相続人が手続きだけを放置したまま亡くなると、改めて数次相続人を交えて、遺産分割協議を実施する必要が生じる可能性がある(※1)

・口座を10年間放置すると、休眠口座(※2)になり口座を復活させる手続きが必要になる

(※1)遺産分割協議:被相続人(故人)の財産について、相続人全員でどう分割するか話し合うこと​​。合意自体は書面にしなくても成立しますが、こういったことが起こりうるため、速やかに合意な内容を「遺産分割協議書」として書面化し、速やかに金融機関で手続きを行うようにしましょう。

(※2)休眠口座:金融機関に預金として預け入れたまま、長期間その口座へ預金者側から入出金などの取引が行われないまま放置された預金口座のこと​​。休眠口座に対して手数料を導入している銀行もある。

銀行の相続手続きをしないで放置していても、特に罰則などはありませんが、こうしたリスクを避けるためには、早めに口座の相続手続きをすることが重要です。

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【銀行手続きは相続開始から概ね6か月以内には行いましょう】

銀行の相続手続きは、公正証書遺言があるか否か、遺言執行者がいるか否かに関わらず、概ね6か月以内に手続きをすると良いでしょう。

これは、「相続税の申告期限(※)」あ「相続開始から10ヶ月以内」とされており、それまでに預金残高などを明らかにした方が、相続税の申告漏れを防ぐためにもいいと考えられるためです。

相続税の申告期限よりも時間的余裕をもって完了すれば、遺言者の預金を相続税の納税資金や行政書士等の報酬の支払い原資としても活用できます。

(※)相続税の申告は、被相続人が死亡したことを知った日(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内に行うことになっています。​​相続税の申告と納税​​|国税庁

4-3.銀行での相続手続きは、書類を全て提出できたとしても、完了までに1週間以上かかることがある

公正証書遺言に基づいた銀行での相続手続きは、書類を全て提出できたとしても、完了までに1週間〜2週間ほどの時間がかかる場合があります。

手続き書類を全て提出し終えたら、すぐに払い戻しが実行されるわけではないので注意しましょう(戸籍謄本等の必要書類を収集するだけでも、2~3週間以上かかるケースも珍しくないです)。

銀行は、提出された書類をもとに被相続人と相続人の関係を確認しますし、公正証書遺言が存在しても、その記載内容の読み取りや法的な解釈と確認に時間を要するため、このように一定の時間が必要となります。

また、提出した書類に不備があった場合は、書類の差し戻しや再提出が必要となり、払い戻し等ができるまでの期間がさらに長くなってしまいます。

銀行での相続手続きは一定の時間がかかることを考慮して、時間に余裕を持って準備を進めるようにしましょう。

 Check! 

【銀行窓口の営業時間にも注意が必要】

銀行手続きは、銀行窓口の営業時間内に行わなくてはならないため、営業時間にも注意が必要です。

ほとんどの銀行の営業時間は、平日の朝9時〜午後3時です。平日はお仕事がなかなか休めないという方は、行政書士などが提供する「遺産整理サービス」を活用することも検討すると良いでしょう。

(※)郵送での対応もありますが、書類の書き方の質問等がある場合、問い合わせは営業時間内となります。

遺言執行者の指定がない場合は、「行政書士法人エベレスト」へお気軽にご相談を!

遺言執行にお悩みなら、「行政書士法人エベレスト」へお気軽にご相談ください。

公正証書遺言に遺言執行者の指定がない場合、公正証書遺言の内容を実現するには、指定がある場合に比べて煩雑な手続きとなります。

しかし、行政書士法人エベレストでは、必要書類の収集から遺言執行支援(遺産整理サービス)を比較的安価に提供しており、遺言内容の実現に向けた諸手続きを一任することができます(※当グループ内に税理士法人、司法書士法人、社会保険労務士法人が存在するため、多岐に渡る相続手続きであっても、各専門家が個別に対応可能です)。

「遺言シェルパ名古屋」を運営している「行政書士法人エベレスト」では、皆様のご相続手続きに関するご相談や、遺言執行に関するお悩みに、豊富な経験と実績のある行政書士が丁寧に対応させていただきます。

まずは下記までお気軽にご相談ください。

 行政書士法人 エベレスト 

6.まとめ

本記事では、公正証書遺言に基づく銀行での相続手続きの執行方法について解説しました。

公正証書遺言がある場合の銀行での相続手続きの大きな流れは次のようになります。

①死亡連絡:(遺言執行者または相続人代表者等が)手続きする銀行(支店又は相続手続きの担当部署)に連絡​​する(※1)
②書類収集:(遺言執行者または相続人代表者等が)必要書類を準備する(遺言書、故人の戸籍謄本、遺言執行者や承継者の印鑑登録証明書など)
③書類提出:(遺言執行者または遺言書に記載された承継者等が)銀行に必要書類及び所定の相続手続き書類を提出する
④承継完了:(遺言執行者または遺言書に記載された承継者等が)銀行による該当口座の解約・払い戻し、定期代性預金の名義変更等の承継手続きの完了書類を受け取る(※2)

遺言執行者指定がある場合、ない場合、それぞれで必要な書類等についておさらいしておきましょう。

言執行者指定の有無

手続きする人

必要書類

指定されている場合

原則として遺言執行者
(※2)

①(遺言者の死亡が記載された)​​戸籍謄本等
(※1) 及び承継者の戸籍抄本


②(遺言執行者の)​​実印
 ※捺印や捺印漏れに対応するため


③遺言執行者の印鑑登録証明書(原本)


④遺言書(正本又は謄本の原本)


⑤(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)


⑥(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

指定されていない場合

遺言書に記載されている承継者(が最も円滑)

①(遺言者の死亡が記載された)戸籍謄本等
(※1)及び承継者の戸籍抄本


②(承継される方の)戸籍抄本(※1)(※3)


③(承継される方の)実印
 ※捺印や捺印漏れに対応するため


④(承継される方の)印鑑登録証明書の原本


⑤遺言書(正本又は謄本の原本)​​


⑥(各金融機関所定の)相続届(相続手続き書類)


⑦(遺言者の)通帳やキャッシュカードの原本

(※1)法務局発行の「法定相続情報一覧図の写し」(登記官の認証文言付きの書類原本)を提出する場合は、戸籍謄本の提出は原則不要になります。遺言書の内容を金融機関へ知らせて、必要書類の確認をとってもらうようにしましょう。

参照:法務省|法定相続情報証明制度について

(※2)遺言執行者が裁判所に選任されている場合は、遺言執行者選任審判書の原本が必要になります。

(※3)遺言者と同一戸籍の方については不要な場合があります。​​

公正証書遺言がある場合の銀行手続きがスムーズに執行され、故人の想いを少しでも早く実現させるために、この記事がお役に立てば幸いです。